海にかかる霧

邦題「海にかかる霧」
原題「해무(海霧)」



ポン・ジュノ × シム・ソンボ監督
キム・ユンソク × パク・ユチョン主演

韓国映画好きにとっては待ちに待った作品であり、そこに日本でも多くのファンを持つパク・ユチョン氏がキャスティングされているので、多くの人がご覧になる作品になる事が予想されますので出来るだけ深く内容には触れずにご紹介したいと思います。



<Story>
不況にあえぐ漁村。6人の乗組員を乗せたチョンジン(前進)号は、一発逆転の大漁を狙って出航するが叶わない。切羽詰まった船長は、中国からの不法移民の密入国を手伝う、という闇ルートの仕事を引き受けてしまう。沖合で密航船と合流し、密航者たちを乗り換えさせて陸へ運ぶ。容易く思えた計画は、海上警察の調査、悪天候に阻まれ、思いもよらぬ事態に堕ちいって行く…。(引用:「海にかかる霧」公式HP←click)

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<レビュー>

「殺人の追憶」のポン・ジュノ監督の初製作&同作品脚本家シム・ソンボ初監督作品
「殺人の追憶」は全世界でも映画ファンに認められている名作中の名作であり、この二人がタッグを組んだ事に加え
①2001年に実際に起きた出来事を描いた人気舞台作品の映画化
②韓国映画界を牽引する名優揃いのキャスティング
③パク・ユチョン(JYJ/東方神起)のスクリーンデビュー作。しかも濡れ場有。
などなど…公開前から本国でも話題が多かったものの実際には同時期に公開された超大作(「海賊」「鳴梁」の2作)に押されて正直大ヒットとまではいっていない。(個人的にはその中でも一番好きな作品でしたが。)ポン・ジュノ監督がメガホン取っていたらもう少し演出が違っていたかもしれないなと思う部分も勿論あったが、非常に韓国映画らしく予想を何度も裏切られる大胆なようで緻密なストーリー展開は流石。

本作の基になったのは2001年に韓国の麗水(ヨス)で起きた密航事件。内容についてネタバレになるので記載はしないが、実に残忍な信じがたい事件である。ポン・ジュノ監督の作品は実際の事件が題材になっていることが多い。名作「殺人の追憶」は1986〜1991年に起きた華城連続殺人事件、「グエムル〜漢江の怪物」は2000年に在韓米軍が大量のホルムアルデヒドを漢江に流出させた事件など、時代ごとの事件を取り入れており、韓国社会の闇を大胆に描いている。



穏やかな序章。6人の船員達の日常。
本編は船員達各々の生活や船上での日常シーンから始まる。上にあげているポスターの一枚は、そんな船員達の集合写真だ。

浮気をしている妻には何も言えないが、チョンジン号や乗組員には船長としての役割を全うするチョルジュ(キム・ユンソク)
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祖母と二人暮らし、船員になったばかりの心優しい普通の青年、末っ子のドンシク(パク・ユチョン)
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船員たちを優しく見守る年老いた機関長ワノ(ムン・ソングン)
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動揺を見せることなく何事にも冷静な甲板長ホヨン(キム・サンホ)
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女好きで執着心が強く思考回路が単純なチャンウク(イ・ヒジュン)
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女と金好きで、いつもチャンウクを出し抜くギョング(ユ・スンモク)
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性格も年代もバラバラではあるが、同じ船に乗り共に生活をする家族のような乗組員たちの貧しくも穏やかな生活が丁寧に描かれている。これから起こる事など誰一人と想像もしていなかったであろう前半のこの船員達の姿が、その後の極地に立たされた時の人間の変貌振りを引き立たせる秀逸な序章である。演じるのは文句つけようの無い演技派俳優ばかり。

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船員ドンシクと密航者ホンメの愛
もう一枚のポスターの二人の陰はドンシクとホンメの出会いのシーン。
一番若手の船員ドンシクは最初の出会いからホンメ(ハン・イェリ)に惹かれる。
警戒しつつも徐々にドンシクに惹かれるホンメ。韓国に無事到着しソウルで再会を誓う二人。
クランクイン前から二人が肌を合わせるシーンが話題となっていたが、そのきっかけとなったのは、「愛している」という快感を求めるためでは無く「生きている」という事を実感するための、非常に切なく、物語の中に無くてはならないシーンだった。
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真の俳優へと成長したパク・ユチョン
2009年まで東方神起のメンバーであり現在JYJとして活躍する彼は本国で「トキメキ☆成均館スキャンダル」「屋根裏部屋の皇太子」をはじめ計6本の人気ドラマに主演。史劇から現代劇まで幅広い内容に対応出来る演技力、表現力が高く評価されていた。
そんな彼がアイドルとしてのイメージを全て崩しかねない役柄だったにも関わらず、この映画のために体重を増やし、訛りのある台詞や濡れ場さえもこなし、完璧な田舎の青年になりきりった。そして他の名優達に一歩も引けを取らない堂々としたスクリーンデビューを飾った。日本ではユチョンのファンとして見に行く方々も多いだろうが想像している彼の姿は映画の中には一切出てこないだろう。逆に何も知らずに見に行った人は彼がかつて東方神起のメンバーだったと気付く人がどれ位いるのだろうか。それほどまで彼は作品の中でドンシクとして生きていた。

パク・ユチョンは本作で、強力なノミネート陣が多くいる中、韓国の2大映画賞である青龍映画賞、大鐘映画賞の新人男優賞をはじめ2014年度の国内映画新人賞を総ナメした。受賞に値する演技ではあったが、前述したように映画そのものが大ヒットとは言えなかった為、正直難しいのではと思っていたが、結果は文句無しの総ナメ状態。それだけ見応えのある演技だったということだ。彼がスクリーンデビュー作として「海霧」を選んだことにより、アイドル出身の”演技ドル”としてでなく役者パク・ユチョンとしての存在を確立させた。ユチョンは現在韓国で放映中の主演ドラマ「匂いを見る少女」でも女心をくすぐる演技を見せて話題となってる。ドラマの撮影終了後の入隊が予想されているが、入隊後に公開になるであろう現在撮影中の映画へのカメオ出演も決まっており、兵役後もドラマ・映画ともに出演依頼は絶えない役者になるだろう。



<ポスター紹介>
相変わらず、韓国のポスターはキャッチコピーの一言でキャラクターが分かり易い。

「この船は俺が責任を取る。」
反発をする密航者に対し、チョルジュが突然「この船では俺が大統領であり判事であり父親なんだ!」と大声を出すシーンがある。少しずつチョルジュの狂気が垣間見えて来る。彼の船に対する執念は最後の最後まで、海の底よりも深かった。
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「俺が最後まで守ってやる」
家族の様な存在だったはずの仲間達が狂って行く中、頼りなかった末っ子のドンシクはホンメを守る為に本来の自分を見失うことなく、人間として男として成長して行く。
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「人命が優先だろう」
ドンシクを特に可愛がっていたワノ。心優しい上に老いも重なってか、目の前の事件を受け入れきれず良心の呵責に負け精神的に真っ先にダメージを受けてしまう。
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「何事もなかったんだよ」
とにかく全てを無かった事にしようと、どこまでも船長に従うホヨン。
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「女もいるだろ?」
男の本能の塊で、欲張ろうとすればする程に損する残念な男チャンウク。
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「金、いくらくれるって?」
飄々としていて美味しい所を全て持っていくギョング。それは極地にたたされても変わる事はなかった。
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「無事にたどり着けるのよね?」悲惨な事故の後に頼れるのは目の前にいるドンシクしかいなかったホンメ。彼女は無事に韓国へ足を踏み入れる事が出来るのか。
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最後のシーンは色々な意見が出る事でしょう。
韓国版のDVDには本編をシム・ソンボ監督と船員6名+ホンメ全員で見返しながら雑談するという副音声が入っていて、それがまた面白い。色々な裏話や思い入れ、見解をはじめ、主要キャスト以外の少ししか出番の無いドンシクの祖母、チョルジュの妻、その浮気相手他、細かい配役も監督自身が尊敬している舞台/映画中心に活躍する俳優を使ったとの事。
また、特典映像では未公開カットが含まれており、最後のシーンに入らなかったカットを見る事が出来るのですが「ああ、このシーンを入れるのと入れないのでは確かにその後に続くラストの印象が違うなー」と感じたり…。


最後に…私は字幕版無しでしか鑑賞していないのですが、予告版を見る限り訛りのニュアンスまでは翻訳されていません。そこが伝わればもっと面白いと思うのですが、訛りを文字で表すのは、逆のパターン(日本の方言→外国語)を考えても困難ですよね。なので、鑑賞前にこちらのページを見られた方は、何となく字幕と方言独特のイントネーションを脳内変換しながら(笑)ご覧頂ければと思います。

10人の泥棒たち

以前"fashion"記事でご紹介した「星から来たあなた」のコンビ(←click!)が初共演した映画「10人の泥棒たち」をご紹介。


※日本版は吹き替えだったので韓国版ティーザーです。

「10人の泥棒たち」公式サイト→http://10dorobo.jp/

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<Story>
伝説の泥棒と呼ばれるマカオ・パク。幻と言われているダイアモンド「太陽の涙」を手に入れるべく、韓国と中国から無敵の泥棒ドリームチームを結成しようと呼びかけたプロの泥棒10人。…のはずだったが、彼らは「太陽の涙」の報酬の他に各自の野望や想いを持って集まっていた。


<レビュー>

見逃せないストーリ展開。あっという間の136分。
まさに十人十色の魅力的過ぎる10人の泥棒たち。


まずは今回メンバー収集したリーダー、マカオ・パク役は以前、映画「ファイ」の記事(←click)でも紹介した韓国では言わずと知れた実力派俳優キム・ユンソク。今回も見事に韓国・中国チームを統制する濃いキャラクターを演じている。

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マカオ・パクの代わりに監獄へ入り、出所したばかりの元・恋人ペプシ。以前、映画「観相師」の記事(←click)で紹介したキム・ヘスが、やはりセクシー姉さん役で登場。ペプシはマカオ・パクが予定していた収集メンバーではなかったが、ポパイと組んでマカオ・パクへ復讐しようと無理矢理このチームへ参加。その本心はマカオ・パクへの復讐のなのか未練なのか最後まで分からない。

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マカオ・パクとペプシと以前組んでいたポパイ。ここもまた「観相師」で最高の悪役を演じたイ・ジョンジェが頭は良いのに少し間の抜けたポパイ役として存在感たっぷりに登場。ペプシを何とか自分のものにしたいと考えている。

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ロープ使いの達人イェニコール。一見軽くてムードメーカーのように見えるが、実はクールに周囲を観察している。ずる賢いのにどこか憎めないスーパーキュートな彼女を演じるのは「星から来たあなた」や「猟奇的な彼女」で知られるチョン・ジヒョン。ここでも美しいルックスとスーパーモデル並みのスタイルで数々のファッションを着こなしているので女性は注目!

↓「犯罪が呼べば「は〜い」って駆けつけるわ」と書いてあります(笑)
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韓国チームでは一番の年下ザンパノ。新入りながら堂々とした態度でイェニコールへ想いを寄せる。ドラマ「星から来たあなた」でチョン・ジヒョンに逆に想いを寄せられる事になったキム・スヒョン。曲者だらけの共演者の中でも存在感は抜群の演技力。自分を弟扱いするイェニコールに男らしさを見せようとするのが逆に可愛くて女心をくすぶる。

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「太陽の涙」を狙う間に、金持ち夫婦を演じる中で本気の恋へ変化して行く中国グループのリーダー・チェンと韓国グループのまとめ役ガム。香港スターのサイモン・ヤムと韓国ではドラマでも映画でも活躍するキム・ヘスクが演じている。往年の男女の恋の行方も見所。

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中国チーム所属の韓国人アンドリュー。韓国映画の名作「オールド・ボーイ」にも出演している。小心者なのか度胸があるのか分からない役柄で所々笑わせてくれる。

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中国チームの一番年下、ザンパノ同様何故か堂々としているジョニーと、女性ならではのバトルを繰り広げるペプシやイェニコールとは一線を置いたクールな性格で何か泥棒とは違う匂いのする中国チームの紅一点ジュリー

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泥棒ドリームチームだけあって様々な仕掛けやアクションの素晴らしさは勿論、チームの心理戦、幻のダイアモンド「太陽の涙」に関するビハインド・ストーリー、マカオ・パク&ペプシ&ポパイの三角関係、イェニコール&ザンパノ、チェン&ガムのラブラインも上手く収められていて、見応え抜群なのです。

幻のダイアモンド「太陽の涙」は手に入るのか?
最後に笑うのは誰なのか?


ちなみに本編の最初と最後に出て来るシン・ハギュン。韓国では実力派俳優として認められる人気俳優がさらっと出演しています。2015年韓国で公開された時代物の主演映画「純粋の時代」も素晴らしかったです。日本で公開される時にはご紹介したいと思います。
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「星から来たあなた」も現在BSで放送中!
http://www.bs-j.co.jp/hoshianata/
是非見てみて下さいね!

ソウォン/願い

邦題「ソウォン/願い」

原題「소원(ソウォン)」=邦題通り「願い」という意味でもあり、主人公の子役の名前でもある。

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<Story>

ドンフン(ソル・ギョング)とミヒ(オム・ジウォン)そして一人娘のソウォン(イ・レ)。幸せに平凡に暮らしていた家族に起きた娘の暴行事件。
ソウォンは身体にも心にも傷を負ってしまい、大好きな父親さえ近くに来るのを拒んでしまう。
そんな最も辛い状況の中、犯人の有罪を立証する為にソウォンの証言が必要となり…。

[予告編]


「ソウォン/願い」公式HP→http://hopemovie2014.com/
※8月9日より全国順次公開。
(しかし相変わらず上映館数の少なさ。。。韓国では大ヒット、様々な賞も取った映画なのですが…本当に残念。)

<レビュー>

ソル・ギョング、オム・ジウォンの夫婦役。意外なキャスティングも期待以上。
ソル・ギョングは私が大好きな映画3本に入る韓国映画「オアシス」をはじめ「ペパーミントキャンディ」(両作品ともイ・チャンドン監督)、「シルミド」などで知られる名優。地味なのに存在感のある安定した演技力で魅せる。
オム・ジウォンは反対に今までの役柄上、派手で明るいセレブ感たっぷりなイメージが強かったので「ソル・ギョングと夫婦ってどうだろう?」と内心思いながら鑑賞したが凄く良い演技だった。体重を増やして臨んだのだという。

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ソウォン役のイ・レはオーディションで選ばれた新星。
暴行事件の被害者となってしまう幼い子供ソウォン。
支えてくれる人々の優しさや頑張る姿を目にして、次第に心の病から抜け出して行く過程が涙無しには見られない。この映画の中で一番強い心を持ったソウォン役を見事に演じている。
似たような題材で、先生が生徒を幼児虐待していた実際の施設の裁判の話を基に作られ韓国で大問題となった作品「トガニ」を見てもそうなのだが、こういった内容になると日本では考えられないくらい痛々しい描写を子供達は演じなければいけない。本当に並々ならぬ精神力だ。
※ちなみに「トガニ」も個人的には是非見て欲しい一作品だが、本当に救われない内容なのでエンターテインメントを求める方にはオススメ不可。

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復讐劇でもお涙頂戴ものでもない芯のあるストーリー
個人的には「子供」「動物」「病気」などが題材の"お涙頂戴"的な作品が苦手だ。日本でこの手の作品を作ろうとすると、美し過ぎる夫婦と絵に描いたように可愛い子供、カッコ良い記者や友人役がキャスティングされ主題歌は壮大なバラードのタイアップで完成といったところだろう。
しかし、そこは韓国映画。そんなザ・エンタメな演出は一切無い。
容赦ない描写、思わず目を反らしたくなるシーンが多くあるが、それを納得させるだけの優れた脚本と俳優、そして監督の力によって素晴らしい芯のある作品と仕上がっている。

ここで描かれているのは、家族の憎しみでも、どん底でも、復讐心でもない「希望」。

父親であるドンフンは娘を抱きしめたくても近づく事が出来ない。そんな絶望的な状況の中でも彼はソウォンの心を開く為の方法を一生懸命に考え行動する。
周りの人々も、家族を支え自分たちに出来る事を考え行動する。
そしてソウォンもその気持ちを受けて前向きに生きる努力をする。

こういった事件は100%自分の周りに起こらないとは断言出来ない。被害者、被害者家族、友人、知人…要は加害者以外の立場での視点や苦しみがストーリーに上手く組み込まれており、どの立場になってもおかしくない状況である事を見終わった後に考えずにはいられなかった。

まあ、そうは言っても希望だけでは終わらないのが韓国映画らしいところなのだが(苦笑)憎しみからは何も得るものはないのだとソウォンによって思い知らされることになるシーンはただただ涙が溢れるばかり。

ハンカチは必須。"泣かされた"感は一切無い、"涙が出る"映画だった。

監督は2005年大ヒットした映画「王の男」のイ・ジュンイク監督。現在、ソン・ガンホ主演作を撮影中との事。


[メイキング映像]



<ポスター紹介>
希望と絶望、両極端なキャッチコピーが目を引くポスター。

「一番辛い場所から生まれた最高に心暖まる物語」
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「私達はこの小さな子供一人を守ってあげる事が出来ませんでした」
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観相師

邦題「観相師」
原題「관상(観相)」


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韓国映画をあまり見ない方でも映画好きな人だったら知っているであろう韓国を代表する俳優ソン・ガンホ主演。彼以外の主要キャストも旬な役者だらけで話題だった。
公開当時ちょうど韓国へ行っていたので映画館で見たが、さすがに時代物だったので一度では理解出来ず2回鑑賞。韓国では賛否両論だったようだが、個人的な意見としてはスクリーンで見たほうが良いと思った作品。※字幕があれば十分に理解可能な内容。

公式HP http://www.kansoushi.net/index.html

予告篇


<STORY>
人の顔を見るだけで性格や未来を見抜く力を持っている天才観相師のネギョン(ソン・ガンホ)は、人里離れた場所で義理弟ペンホン(チョ・ジョンソク)と、大事な一人息子ジニョン(イ・ジョンソク)と貧しいながらもマイペースに暮らしていた。そこへ芸姑ヨノン(キム・ヘス)が突然訪ねて来て得意の「観相」を商売にしないかと話を持ちかけるが一度は観相を嫌う息子の為に断る。しかし正義感が強く親孝行をしたいと思う息子ジニョンは官史(役人)を目指し家を離れ都へ向かう。そしてネギョンとペンホンは芸姑の元へ向かい「観相」を始める。噂はたちまち広がり、やがて王族の観相をする事になるが、それをきっかけに王座を狙う一族の政争に巻き込まれネギョンもペンホンもそして息子ジニョンまでも運命に翻弄されていく。

<レビュー>

ソン・ガンホとチョ・ジョンソクのコンビが最高に面白い。
言わずとしれた映画界の演技派俳優ソン・ガンホと息の合った演技を見せたチョ・ジョンソクは舞台・ミュージカル出身の役者で、映画「建築学概論」の助演で一躍注目を浴びた。
映画の中では田舎暮らしをしている前半は間抜けでお調子者の二人。義兄弟なのに異常な仲の良さと絆の強さで笑わせてくれた。ソン・ガンホの映画は殆ど見ているが、個人的にはこのカップル(敢えてカップルと言わせて頂く。笑)が一番好きかもしれない。

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イ・ジョンソクの強くも儚い演技。
どちらかというとドラマでのイメージが強く、そこまで演技派のイメージはなかったのだが、この作品の中で実は一番哀しく切ない役にも関わらず、その演技は本当に素晴らしかった。田舎から都へ出る時に、父親と叔父に挨拶をするシーンがとても印象的で美しかった。

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セクシー姉さんキム・ヘスは史劇でもセクシーだった。
映画「10人の泥棒たち」が近い所では印象に残っているが、この作品でも自分勝手なのに何故か魅力的で憎めない人情味溢れる芸姑ヨノンを好演。

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イ・ヨンジェが演じる悪役・首陽(スヤン)大君は大ハマり。
中堅俳優の中でも今最も勢いのある男優イ・ヨンジェ。今回の役はもう本当に悪い。ひたすら悪い。なのに色っぽい。悪役らしく毎回黒の衣装を身に纏っているのだが、それが又悔しい事に似合う。「最高にセクシーな悪役」という言葉がピッタリ。

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威厳ある演技で圧巻のペク・ユンシク。
登場シーンは他の出演者に比べて比較的少ないのだが、存在感抜群の安定の演技力。
完璧な吉相を持つペク・ユンシク演じる左議政ジョンソ。若い王を支え政権を裏で支える運命のはずだったが、首陽大君はその運命さえも変えるべく王座を狙う。詳しく書くとネタバレになるので控えるが、とにかく彼の最後のシーンがド迫力。

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前半は結構コミカルなシーンが多いが、後半戦は一気に切ないストーリーへ。
相を変えると運命も変わる。若き王と左議政ジョンソを守ろうと奔走するうちに、一番大事な息子まで巻き込んで自ら哀しい運命へと陥ってしまうネギョン。天才観相師ゆえの人生の結末に注目。

ということで、恒例の登場人物のポスター紹介。
それぞれの動物の相が記載されている。

蛇の目で全てを見通す”アオダイショウ”の相、ネギョン(ソン・ガンホ)
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愛嬌ある"狸"の相、ペンホン(チョ・ジョンソク)狸_チョジョンソク.jpg


清廉な"鶴"の相、ジニョン(イ・ジョンソク)鸛_イジョンソク.jpg


色気のある"猫"の相、ヨノン(キム・ヘス)猫_キムヘス.jpg


凶暴な"狼"の相、スヤン大君(イ・ヨンジェ)狼_イジョンジェ.jpg


気高い"虎"の完璧な吉相、ジョンソ(ペク・ユンシク)
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ファイ〜悪魔に育てられた少年

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邦題「ファイ〜悪魔に育てられた少年」(4月19日〜全国順次公開)
原題訳「ファイ〜怪物を飲み込んだ子供〜」


先ず「ファイ」というタイトルに疑問な人も多いと思いますが、これは主人公の名前。
韓国で最初に広告を見た時、知らない単語だったので速攻調べましたが勿論出てこないので戸惑いました(笑)


主演のファイ役には、2005年公開のヒット作「サッド・ムービー」というオムニバス映画で注目を浴び天才子役と呼ばれたヨ・ジング。
近年もドラマでJYJユチョン主演「会いたい」や、韓国で大人気のキム・スヒョン主演「太陽を抱く月」でそれぞれの主役の子役時代を演じていたが、今回の映画で子役というイメージを払拭し成熟した姿を魅せた。


殺人強盗集団のリーダーのソクテ役に中堅演技派俳優のキム・ユンソク。
「チェイサー」「哀しき獣」「10人の泥棒たち」など日本でも注目を集めた映画に出演しており、韓国でも日本でも人気が高い俳優だ。


日本公式:http://www.hwayi-movie.net/


<STORY>
3歳で殺人強盗集団に誘拐され、何も知らずに5人の犯罪者である父親に育てられたファイは、学校へは行かずにそれぞれの父親の持つ犯罪スキルを学びながらも心優しい少年に育ったかのように見えた。そんな時、初めて連れて行かれた犯行現場で銃を撃つように命令されたファイは幼い頃から時折現われる正体不明の怪物の幻想に怯え一度は失敗するが、別の現場で冷酷な父ソクテの迫力に押され遂に銃を撃って殺人を犯してしまう。しかも手にかけた被害者は実の父親だった。それまで幸せに暮らしていたファイにとって、その事実はあまりにも残酷なものだった。ファイの葛藤と5人の育ての親への復讐が始まる。


<レビュー>

ファイ役のヨ・ジングの演技力に脱帽。


前半の穏やかで優しい表情は誰が見ても普通の家庭で幸せに育った男の子である。(途中、尋常でない狂気を持っている事を彷彿させるシーンも必見。)
ある日、ファイは実の父親を殺してしまう。ここから物語は一転し、ファイはそれぞれの父親のスキルを全て身に付けた最強の凶器であり、復讐の為に怪物と化していく過程の演技を観るだけでも一見の価値がある。

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ソクテ役のキム・ユンソクの迫力。


ソクテも又、幼い頃からファイ同様に怪物を見ていた。ファイに対して一番残酷な父だったが、彼を一番理解していたのもまたソクテだったのではないかと思う。この二人が見ていた怪物は普通の生活では気付く事の無い人間全てに潜む闇の化身ではないだろうか。
最後の最後までファイを追いつめる姿はまさに怪物。さすがの演技力。
殺しても殺しても最後まで死なない役をやらせるなら、キム・ユンソク、もしくはチェ・ミンシクの右に出るものはいないだろう。

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アボジとアッパ


日本でも「お父さん」「父さん」「親父」「パパ」と呼び方があるように、韓国でも父親の呼び名に違いがある。
ファイが「アボジ」(お父さん)と呼ぶのはソクテのみ。他の4人は全て「アッパ」(親父、パパ)と呼んでいる。
この呼び名でファイとそれぞれの父親との距離感が分かる。
アッパ達と過ごすファイは素直で可愛く生意気な面も魅せるが、ソクテと接するファイは常に緊張感を持っている。
いつもは厳格な父、ソクテに頭をなでられた時、ファイが嬉しそうな表情を見せたのが印象的だった。



刷り込みで上書きされた真実と現実。


誘拐という現実に上書きされ消された「父親は五人しかも全員が犯罪者、母親は一人」という常識からかけ離れた非現実な環境。
しかしファイは自分が誘拐された事も、育った環境がおかしいという事も気付いていない。
私たちが住む世界も同様で、産まれる時に選ぶ事の出来ない親、国、教育…幼い頃から自分の置かれた状況で人格や考えはある程度形成される。
違う国の両親に育てられれば自然とバイリンガルになるし、強い信仰者であればその子もまた何も疑わずに親と同じものを信仰する。
国同士の抗争もしかりである種のマインドコントロールのようなものだ。誰も自分が間違っているなんて思っていない。
それでも人は自分の知らない世界に触れた瞬間、自分の育った世界が正しいのか間違っているのか分からなくなる時がある。
途中、ファイは一人の女子学生と心を通わせるが、彼女と自分が違う世界に生きているという事に気付いてしまう。とても切ないシーンの一つだった。


ファイが信じてきた世界=5人の父親が教えてきた世界。世間がどう見ようが、彼らにとってはそれが普通の世界だった。
それを壊したのも彼ら自身なのが皮肉な事実なのだが、この映画を見終わった後に考えさせられてしまった。

誰が一番ファイの事を愛していたのか、そしてファイは本当は何を、誰を信じたかったのか。




残念なのは邦題がナンセンスで極まりないという事。邦題だけみてしまうと、まるでホラー映画。
この映画には「悪魔」は存在しないし、劇中にも一言も出てこない。そもそもファイは「悪魔に育てられた少年」ではない。
まるで父親達を「悪魔」と決めつけたようなタイトル。原題の通り幻想の「怪物」が登場し「怪物を飲み込んだ少年」で良かったのではと思う。


監督はチャン・ジュナン氏。
彼の妻は私が大好きな女優、ムン・ソリ氏。(イ・チャンドン監督の映画には欠かせない存在。)彼女の話題は又いずれ。




韓国版ポスターは、殆どの映画がメインポスターとは別で主要キャストに焦点を当てた別バージョンを制作する。
この「ファイ」にも勿論存在し、それぞれのキャストの印象的な台詞がハングルで書かれているので、主要キャストがどんな人物かを想像するには良い素材。


"이버지들이 다 괴물인데. 너도 괴물이 돼야지."
(親父がみんな怪物なのに。お前も怪物になるべきだろう)


冷酷な犯罪集団のリーダー、ソクテ。この一言を何の感情も無く無表情でファイに伝えたシーンはゾッとした。
冷酷な性格だが愛情を受けて育たなかったソクテは愛情の表現の仕方が分からなかった。
自分と同じよう育てる事がファイにとっての幸せだと本気で思っていたのかもしれない。

ソクテ

"화이는 우리랑 달라. 이대로 키울 순 앖어."
(ファイは俺たちとは違うんだ。このまま育てる訳にはいかない)


犯罪プランナーであり常識者のジンソン。ファイを犯罪者にはせず、普通の人間として父育てようとしたアッパ。
絵の才能を発揮するファイを留学させ普通に育てる事を願ったジンソンだったが、一番始めにファイの手にかかってしまう。

ジンソン

"화이야. 하..하..할 수 있지?"
(ファイ、で、、で、、出来るよな?)


カーチェイスと得意とするギテ。だらしない部分もあるがファイにとっては優しいアッパ。
ファイに謝罪し、復讐を止めようとしたのはこのギテだけだった。

ギテ

"한 번에 죽여야 돼. 안 그러면 넌 백프로 주어."
(一度で殺せ。出来なけばお前が100%死ぬぞ。)


スナイパーのボムス。クールで友達のようなアッパ。5人の父親の中でも陰が薄い方だが、ファイの射撃力は彼譲り。

ボムス

"근데 화이…처음부터 그러려고 데려온 거지?"
(ところで、ファイの事だが、、、最初からこうしよう(犯罪者にしようと)と連れてきたんだろ?)


残酷な現場ほど楽しむ狂気のアッパ、ドンボム。ファイが豹変する事さえも面白がる人物。完全にイってます。

ドンボム

そしてファイ。


"아버지. 왜 절 키우신거에요?"
(父さん、何故僕を育てたんですか?)


最後まで葛藤し続けるファイの苦悩がこの一言に現れている。

ファイ


最後に絵を得意としたファイが書いたであろう家族の絵。
これがファイの描いた幸せな世界だったのか。

イラスト

韓国映画の楽しみの一つは、この公開前の広告媒体だったりもします。日本ではこういうプロモーションは殆どありません。今後も韓国映画を紹介する際は韓国でしかみられないポスターも取り上げていこうと思います。


<追記>
主要人物があまりにも濃過ぎて(苦笑)日本の公式HPなどでは紹介すらされていないのが残念だが、この映画には日本にも根強いファンを持つ映画「オールドボーイ」でデビューし「建築学概論」「オオカミ少年」で助演ながらも存在感抜群の演技を見せた若手俳優のユ・ヨンソクも出演している。昨年はヒットドラマ「応答せよ1994」にも主要キャストに選ばれ今後も期待される若手俳優の一人。これまでの出演作品も癖のある役が多かったが、この作品でも良い味を出しているので鑑賞される方には是非注目して欲しい役者。


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